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 日本スポーツ心理学会は,2023年に50周年を迎えます.現在は850名程度の会員を擁し,年2回の機関誌の発行と年次大会を行っております.50回記念大会は2023年9月29日〜10月1日にかけて,東京大学の駒場キャンパスで行われます.また,記念大会に合わせて,従来の記念誌に比べて比較的若い執筆者を中心とした50周年記念誌が発行されます.本学会をこれまで築き上げてこられた諸先生方の取り組みに感謝をしながら,学会の将来を展望し,次の若い世代につなげられるように,新しい理事の先生方と協力しながらがんばっていきたいと思います.
 そのために取り組むべきこととして,2点考えています.
 一つめは,「スポーツ心理学」という学問領域を,日本におけるより多くの方々に理解していただき,その学問的重要性を広く認知していただくことが大切になると思います.学会設立当初から,現場への還元や啓蒙活動などが幅広く行われていたようですが,未だスポーツ科学の中においても,一般の方々においても,スポーツ心理学が十分認知されているとはいえない状況のように思われます.そのためには,学会発表に留まらず,学会誌への掲載に学会員が取り組む必要があります.学会発表から学会誌への掲載は,簡単なようで簡単ではありません.それは,スポーツ心理学会での発表数とスポーツ心理学研究への掲載数の比を見れば明らかです.しかし,その壁を越えて,世間が認めてくれる知見を論文として開示し,積み重ねていく努力を継続していくことが,全学会員の使命だと考えています.それが,「スポーツ心理学」を発展させてきていただいた諸先生方への恩返しでもあり,これから後を引き継いでいく若き研究者への財産でもあります.
 二つめは,研究成果を国内に留まらず,国際的な学会・学術誌で伝えていくことが,日本スポーツ心理学会が世界で認知されていくためには必要と感じています.言葉の違いもあって,日本人の研究は,それほど海外では認知されていません.30年くらい前に海外で研究生活を送った際に,あまりにも日本の研究が知られていないことに驚きを感じました.私自身は,日本の研究のいくつかは,国際的に誇れると思っていましたが,全く知られていませんでした.せっかくの素晴らしい知見を産み出しているのだから,それを英語で発表し,英語で執筆し,世界中の研究者に知ってもらう必要性を強く感じたのを憶えています.
 100周年時に「スポーツ心理学」が学問領域として根づくためには,本当に価値のある知見をできるだけ多く生み出し,それを広くわかりやすく伝えていくが必要と思います.会員各自がそのために,どのような研究を目指すのか,どのようにそれを伝えていくのかを自らに問いかけ続けていく必要があると考えます.そのためのきっかけを作り,会員相互の交流・研鑽の場を準備することが,学会を運営する理事会の責務であると考えています.そのための組織のあり方も含めて,この問題にも取り組んでいきます.
 また,6年前から一般市民向けの公開講座も開講し,HPで公開してきました.こうしたアウトリーチ活動もより充実させる方向で検討していきます.さらに,開催地は未定ですが2025年に国際スポーツ心理学会が開催される予定です.また,2026年2月にタイのバンコクでアジア南太平洋スポーツ心理学会が開催されます.より多くの若手研究者が発表できるようにも取り組み,国際的に認められる研究を推進していきたいと思います.それとともに,学会誌への研究論文投稿も増やしていきたいと考えています.学会の発展,学問領域の充実には会員の協力が不可欠です.理事会も努力いたしますので,会員のご協力をよろしくお願いいたします.
2022年11月吉日
日本スポーツ心理学会 会長  筒井清次郎
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